バングラデシュの算数教育を考えるとき、計算の正解だけでなく、数が何を表すかを子どもが理解しているかに目を向けることが大切です。物を一つずつ数える、多さを比べる、十のまとまりをつくる。身近な道具でこうした考え方を確かめ、図や式につなぐ学びを紹介します。
基礎的な数の力は、計算だけではない
UNICEFの基礎学習調査では、数の認識、大小の比較、足し算、数の並びの規則性を確かめています。計算問題だけで数の理解全体を判断しない視点が得られます。出典:UNICEF Dataの基礎学習スキル解説。
UNICEFの2026年9月の報告は、バングラデシュの中等学校で、理解段階を確かめて授業を調整する取り組みを検討しています。以下の低学年向け例の効果を直接示す研究ではありません。出典:UNICEFの学習段階に応じた授業に関する報告。
1.「数を唱える」と「何個あるか」をつなぐ
ここからは、授業を考えるための例です。キズナの実施事業や、バングラデシュのすべての学校の授業を示すものではありません。年齢と学習経験に合わせ、扱いやすい紙カードや積み木などを使います。
まず積み木を5個置き、指で一つずつ示しながら数えます。数え終わったら「全部でいくつ?」と尋ねます。最後に言った「5」が、最後の積み木の名前ではなく、全体の個数を表していることを確かめる場面です。
次に、その5個を広く並べたり、集めたりして、個数が変わったかを聞きます。物を増やしたり減らしたりしていないなら、間隔が変わっても5個です。迷ったら再び一つずつ確かめられるようにし、答えを急がせません。
2.多い・少ないを、一対一で比べる
6枚と8枚のカードを二列に並べ、一枚ずつ対応させます。8枚の列に2枚余ることが見えれば、「8のほうが多い」だけでなく「2枚多い」まで考えられます。列の長さに頼らず、一つずつ組にして比べる方法です。
配置を変えた後も同じ比較ができるかを見ます。すぐに大小の記号を書かせる前に、どこを見て判断したかを尋ねると、次に何を説明するかを考えやすくなります。友達の答えを聞いただけで理解したと決めず、それぞれが試す時間を残します。
3.十のまとまりで、位取りを見える形にする
13本の棒を、10本の束一つと、ばらの3本に分けます。「十が一つ、一が三つ」で13を表せることを、実物と数字を対応させて確かめます。数字の1と3を別々に読むだけでなく、置かれる位置で意味が変わることに目を向けます。
その後、10本の束をほどいても全部で13本のままであることを確かめます。慣れてきたら、同じ考え方で23を表すにはどうするかを相談できます。束のつくり方を覚えたかだけでなく、まとまりと全体の数をつなげられるかを見る例です。
4.具体物、図、式を行き来する
米国教育省のIESが2021年に公表した算数指導ガイドは、具体物と図などの表現を適切に選んで使うことを勧めています。バングラデシュでの実施成果を示す資料ではありません。出典:IESの初等段階の算数支援ガイド。
たとえば積み木3個に2個を加えた場面を、紙の丸印に描き換え、3+2=5の式と対応させます。「この3は、どのまとまり?」と確かめれば、式の数字が何を指すかを話題にできます。分からなくなったら実物に戻り、同じ場面をもう一度つくって構いません。
具体物を片付ける速さを目標にせず、実物・図・式が同じ数量関係を表していることを重視します。道具で遊ぶ時間と、何を確かめる時間なのかを教員が整理しておくことも大切です。
答えの後に「どう考えたか」を聞く
最後に、数字や配置を少し変えた問題を試します。「一つずつ数えた」「十のまとまりを使った」など、子どもの方法を短く記録すれば、次の授業の出発点になります。一問の正誤や計算の速さだけで、算数が得意・苦手と固定しないようにします。
よくある質問
専用の高価な算数教材が必要ですか?
紙カードや積み木などでも、数える、対応させる、まとめる活動を検討できます。価格や種類の多さより、何を表す道具なのかが分かり、必要な数を扱えることが大切です。
具体物を使えるようになったら、すぐ式だけに進みますか?
一律には決めません。図や式と実物の対応を説明できるかを確かめ、必要なら行き来します。答えが合うことに加えて、その式が表す場面を理解しているかに目を向けます。
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公開資料をもとにした解説と授業の検討例です。現地取材やキズナの算数事業の成果報告ではありません。資料確認日:2026年10月2日。
