教師が授業を見合い、子どもの反応をもとに話し合い、次の授業を少し変える。この循環が、同僚と学ぶ授業研究の出発点です。バングラデシュの教育を考えるとき、教材や施設に加えて、教師自身が日々の授業から学べる機会にも目を向けられます。今回は、研修の開催回数ではなく、授業の観察を改善につなぐ過程を取り上げます。
バングラデシュでも紹介されてきた授業研究
JICAのバングラデシュでの協力を振り返る報告書は、理数科教育の事業で授業研究の普及を進めたと紹介しています。同僚の授業を観察・検討し、改善を実践する方法です。現在の全校の実施状況を示すものではありません。出典:JICAのバングラデシュ協力50年の報告書(114頁)。
UNICEFの教師向け資料は、同僚の授業を観察する際、目的や記録の共有先などを事前に合意することを勧めています。相互に学ぶための土台となる約束です。出典:UNICEF・教師への支援に関する技術冊子(39頁)。
以下は、こうした考え方を踏まえた話し合いの例です。キズナが実施した授業研究や、特定の学校の成果を報告するものではありません。
観察する前に、一つの問いを決める
「よい授業だったか」だけでは、見る範囲が広すぎて感想で終わりがちです。例えば「説明の後、子どもは自分で作業を始められたか」という問いなら、どの場面を見るかが具体的になります。授業者が気になっている場面から選び、授業全体の欠点探しにしないことが大切です。
観察者には、授業のねらいと、何を記録してほしいかを先に伝えます。開始時に配った課題、説明の順序、取り組み始めるまでの様子など、見る手がかりをそろえます。短い場面だけを見る場合も、「その場面から分かること」と「まだ分からないこと」を分けておきます。
見えた事実と、その解釈を分けて話す
授業後には、まず授業者が意図や気づきを話し、観察者が記録を添える進め方が考えられます。「集中していなかった」という評価より、「説明の直後に、隣の子へ手順を聞き直していた」という具体的な記録なら、次に確かめることを相談できます。
その行動には、指示の長さ、課題の示し方、道具を配るタイミングなど、複数の説明が考えられます。一度の観察で理由を決めつけず、「説明を短くしたら始めやすいだろうか」と仮説にします。教師や子どもの性格の問題に置き換えず、変えられる授業の条件を探します。
メモには子どもの名前をむやみに残さず、必要な学習場面に絞ります。記録や写真を誰が見られるかも最初の約束に含めます。観察した内容が予告なく人事評価や外部発信に使われると、困りごとを率直に話すための前提が変わってしまいます。
次の授業で試す変更を、一つに絞る
話し合いの終わりには、例えば「作業の手順を一つずつ示してから始める」と、試すことを具体化します。説明、教材、座席、時間配分を同時に変えると、何が関係したかを考えにくくなります。最初は小さな変更を選び、同じ観点で次の授業を見直す方法があります。
再び授業を見たときは、うまくいった場面だけでなく、変わらなかった場面も残します。「一部の子はすぐ始めたが、課題を選ぶ場面では迷っていた」なら、次はその選択の示し方を検討できます。結果を成功・失敗の二つに分けるより、次の問いをつくる記録にします。
共有する一枚のメモには、最初の問い、試した変更、子どもの反応、次に確かめたいことを並べると整理しやすくなります。別のクラスで試す場合も、同じやり方をそのまま正解にせず、授業時間や学年などの条件と一緒に伝えます。
振り返りの時間を、学校の仕事として確保する
授業研究を続けるには、観察する人の授業との調整や、短く話し合える時間が必要です。校内で、いつ集まるか、誰と組むか、どの範囲まで記録するかを決めます。報告書を増やすことを目的にせず、次の授業の準備に役立つ負担で続けられるかを確かめます。
授業研究についてのよくある質問
見本になる完璧な授業を用意する必要がありますか?
今回の例で大切なのは、授業者が実際に確かめたい問いです。普段の授業の迷いを共有し、子どもの反応を手がかりに考えます。見せるための完成度より、何を一緒に学ぶのかを明確にします。
一回うまくいけば、他のクラスにも効果があるといえますか?
一回の観察だけでは言い切れません。学年、課題、子どもの理解などが異なるため、条件を添えて共有し、別の授業でも確かめます。同僚の経験をヒントとして使い、効果を保証する方法として扱わないことが大切です。
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資料確認日:2026年10月6日。
